2015-01-01から1年間の記事一覧
生徒会というシステムは、責任の所在をあいまいにするためのクッションである。例えば生徒のあいさつや身だしなみ、そういった終局的な解決が不可能か著しく困難である事項こそが生徒会の仕事とされる。そして、解決できない場合の責任を負う者は事実上存在…
非日常的、ないし非現実的な出来事が起こるには、その余地がなければならない。日常が「自分」や「既知」、「習慣」だけに満たされていては、ハプニングは起こり得ない。 例えば、生活環境が大きく変わるには、安定が欠けなければならない。両親の不在、土地…
友情で結ばれた関係に一方的に恋愛感情を持ちこむのは、それがいくら“純愛”として美談であっても、友情に対する裏切りだと思う。これは兄妹ないし姉弟(擬似的なものも含む)でも当てはまろう。その発想に立った時、恋愛における悲劇とはロミオとジュリエット…
※1本140字程度でレビュー 1.『Bye -INTEGRAL-』(トラウムブルグ7番地) それぞれに傷を抱えた登場人物たちが、半人前の幸せを持ち寄って一人前の幸せをつかもうとする、生と死を見つめた大作。とことん暗い境遇と展開を通して、日常に埋もれる淡い優しい光を…
時たま、「もう恋なんてしないにょろ」*1が無性に聴きたくなる夜がある。でもそうすると、鶴屋さんが頭の中で延々と歌い続けて眠れなくなってしまう。そのせいか、オリジナルのキーが思い出せなくなってしまったし、そもそも原曲に違和感を覚える始末である…
「……“愛”と“恋”の違い?」 今までの文脈をガン無視したその質問に、案の定、S子先輩は怪訝な顔をした。 「昔……そう、高2の春ですね。クラスの女子にいきなりメールで聞かれたんですよ」 「なんでそんなこと覚えてんの?」 「覚えてるというか、今ふっと思い…
『WHITE ALBUM 2~coda~』における冬馬かずさと北原春希の関係は、アニメ版『シスター・プリンセス』における咲耶と航の関係に少し似ている。 咲耶が「お兄様ラブよ」と臆面もなく言えるのは、航がそれを正面から受け取らないとわかっているからだ。もし航…
月並みな話、「人生を変えた一冊」という大層なものを聞かれた時は何と答えるだろうか。真面目に、少し格好つけて答えるなら、アンドレ・ジッドの『狭き門』。もしくは、10年ほど前に読み、青春時代を村山由佳に費やすきっかけになった『おいしいコーヒーの…
茜色というのは、イメージしていたよりもだいぶ暗い色のことを指すらしい。陽が沈む前の夕映えではなく、陽が沈んで夜の帳が下りる直前の赤*1。勘違いしていたほうを何色と呼ぶかはわからないけれども、段々と茜色へと移り変わってゆくグラデーションは、掛…
「愛ってなんですかね?」 二人で飲んでいてなんとなく思いついた質問に、N先生は意外そうな顔をした。 「急にどうした。S子となんかあったのか?」 「んな大昔の話を蒸し返さないでくださいよ。いい加減吹っ切れましたし、今現在僕の身辺が綺麗サッパリなの…
一番好きな川原作品を聞かれると、『笑う大天使』シリーズ*1が真っ先に出てくる。コミックス版2巻までの本編とそれを踏まえての短編3作は、設定やストーリーなど何をとっても素晴らしい。というか、川原教授にドハマりした要因が『笑う大天使』なので、「…
ブログ名の「架空の森」は、漫画家・川原泉教授の短編のタイトルから拝借している*1。川原作品のタイトル一覧を眺めて決めたため、タイトルそれ自体に深い意味があるわけではない。一読者として教授にあやかりたいだけというだけである。 それなのにお恥ずか…
「最近なんかないの?」 S子先輩のありふれた質問がやけに残酷に響くのは、自業自得なのでもうあきらめた。 「ぜんっぜん、ありませんよ!」 おかげさまで。 「……といつもなら言うところなんですが」 「おっ!おっ!」 「ご期待通りの話ではないんですけど、…
手元の辞書で「陳腐」を引くと、「古臭いこと。ありふれていて、つまらないこと」と出る。なるほどその通りなのであるが、「ありふれていて、つまらない」とまで言われる「古臭いこと」は、それだけ繰り返されてきたということでもある。つまり、オリビエ・…