架空の森

ろくなことなんて、書けるわけない。そんな日常。

ピカルディの未解決 【ホワルバ再考 #1】

 『WHITE ALBUM 2~coda~』における冬馬かずさと北原春希の関係は、アニメ版『シスター・プリンセス』における咲耶と航の関係に少し似ている。

 咲耶が「お兄様ラブよ」と臆面もなく言えるのは、航がそれを正面から受け取らないとわかっているからだ。もし航が咲耶を受け入れてしまったら――彼女がそれを期待していないというのはウソだとしても――、咲耶は二度と「お兄様ラブよ」なんて口に出せなくなってしまう。だってそれは、1対12の等間隔な関係というウェルカムハウスの原則を木端微塵に破壊することになるのだ。そうなってしまっては、咲耶は妹たちとはおろか愛しのお兄様とも一緒に暮らすことができなくなってしまうことだろう。その結末は、咲耶と航を含む誰しもが望まない幕切れだ。たとえ、みんなでの生活が最初から3年で終わってしまうことが決まっていて、皆がそれをしっかりわかっているとしても。

 だから、咲耶のアプローチは、のれんに腕押しでなければならない。隣り合って住むかずさと春希の関係も、それと相似だ。トムとジェリーのごとく、追われる者は追われ続けなければならない。どちらの二人も、共犯関係によって成り立つ矛盾した追いかけっこなのだ。