架空の森

ろくなことなんて、書けるわけない。そんな日常。

最近つけ始めた日記の序文

 今日において日記とは、決して読まれたくないものであると同時に、いつかは誰かの目に触れることを期待して書かれるものである。

 

 誰かに読んでほしい内容であれば、ツイッターやブログ等で公開すればよい。逆に、誰にも読まれたくないのであれば、そもそも書かなければよい。

 それでも書きたい=読んでもらいたい時は、自らのパーソナリティに紐づかない形で――要は匿名でブログに書けばよい。ネット上で公開しないにしても、電子データだけであれば処理のコストないしリスクはぐんと低くなる。親族が「機械に強くない」のであればなおよい。


 ところが、日記は紙媒体として残る。そこには書き手が紙媒体を選択した意図を見ることができる。

 つまり、書き手は日記を紙媒体として残す。書き手が意図的に残した文章であるという点で、日記は遺書と同じように機能する。

 あるいはこのように言い換えることができる。

 日記とは、日々更新する暫定的な遺書である。


 以上はあくまで日記についての一般論である。「日記」という体裁をとっている限り本紙にもあてはまる。

 しかしそれは、本紙が私の遺書そのものであることは意味しない。

 本当に遺書をしたためる必要があれば、そのままズバリ「遺書」というタイトルと内容にするだろう。少なくとも今は、遺書を用意する積極的な理由をまったく見出せない。


 結局、本稿の趣旨は生半可な覚悟で人の日記を盗み見てはいけないという牽制の一点にある。

 

<一部を加筆・修正>

ソクラテスかプラトンか、はたまた届木ウカ

 唐突だが、私は月ノ美兎委員長が大好きだ。

 いままで見たことのある「バーチャルYouTuber」の中でも、一人でしゃべり続けることが格段に上手い。それに加え、話すだけで面白いエピソードに事欠かない。「過去の切り売り」*1はラジオ系媒体ではありふれた手法であるが、委員長の語り口と相まって、何物にも代えがたいコンテンツとなっている。

 また、漫画やアニメについての嗜好に同世代的な親近感を覚える(彼女は「16歳の女子高生」のはずなのに!)。委員長のMAD動画にやたらと懐かしいノリが多く、本人もまんざらでもなさそうなところが個人的にとても嬉しい*2

 そして、半ばアクシデント的に垣間見える素の女の子らしさに、ドキッとする。みとらじ第2回放送での私服お披露目と彼ピッピ“呼ばわり”は、<月ノ美兎>というキャラクターの極致であった。詩子お姉さんとのコラボも、シチュエーションを含め非常に面白い企画だった。一方で、放送終了間際の、始めたばかりの一人暮らしの寂しさを吐露した場面では、彼女が自分と地続きに生きてるように感じた。計算しつくされた<月ノ美兎>ではない月ノ美兎が時折現れてしまうライブ感が、彼女に対してガチ恋一歩手前の感情を持っている一番大きな理由である。

 

 バーチャルYouTuberを特集した『ユリイカ』7月号を買ったのは、ひとえに委員長の漫画と文章が読みたかったからである。なお、巻頭の随筆(?)を読むまでこの雑誌が何の・どのような雑誌だったかを都合よく忘れていたことは秘密である。

 4コマ漫画は期待以上の内容だった。また、届木ウカとの対談*3では、届木の強い思想性との対比で委員長のエンタメ志向が浮き彫りになっており、実に彼女らしいと思った。せっかくであれば委員長単独の文章も読みたかったが、彼女の本領は動画でこそ発揮されるであろうから今後の配信に期待したい。

 

 さて、その「届木の強い思想性」である。

 一読した限り、届木のエッセイは特集の白眉であった。<届木ウカ>が何者であり、どこを目指しているかが、たった4ページの中に極めて理知的に凝縮されている。

 たとえば、外野の「現実を見ろ」といった嘲笑に対して、届木は「<主体としての体験>が欠落している」と指摘したうえで以下のように毅然と言い放つ。

 だからこそ自分は「VRアバター=真の魂の交歓」であると表明せねばならない。外見や種族や生まれなどの神や両親から背負わされた咎を脱ぎ捨てて、自ら「自己」をデザインした身体をボディトラッキングリップシンクによって体と完全同期した僕達は、生まれた時に他人から背負わされた肉の檻をまとって生きる人間よりも、魂としてのノイズが少なく純度の高い「本物(リアル)」に近いことになる。それこそ「イデアの自分」なのだから(略)。

 

届木ウカ “個人バーチャルYouTuberという「自身のイデア”、『ユリイカ』平成30年7月号、62~63頁

  届木の文章は「バーチャルYouTuber」論を超えて、存在論現代社会の多様性問題までも射程に入れる。そもそも、同誌で何度も触れられているとおり、「バーチャルYouTuber」とは便宜的なカテゴリ、記号にすぎない。カテゴライズすることによって零れ落ちてしまうことがあまりにも多すぎる。届木のイデア論はその最たるものだと感じた。

 様々な「バーチャルYouTuber」がYouTubeの枠を超えた活動を目指していると聞くが、届木の活躍についてはより一層注目していきたい。

 

 最後にどうでもいいことだが、私の一番好きなバーチャルYouTuberダークエルフのケリン。小学生のころに読んでいたコロコロコミックみたいにおもしろくて好き。 

*1:届木ウカ×月ノ美兎“委員長は美少年の夢を見るか”、『ユリイカ』平成30年7月号、73頁

*2:たとえば、おかき氏の「おジャ美兎カーニバル!!」あたりがとてもすき

*3:届木×月ノ、68~78頁

ひと月前の読書メモと注釈

 再読の喜びは同じ本で何度も違う味が楽しめることにある。その意味で、奈須きのこ空の境界』ほど再読に適した作品を私は知らない。


 そもそも、あの本を一周目で「読んだ」と言えるほど理解できる人間がこの世にどれほどいるのだ。人物像も世界観も時系列も、ほとんどを意図的に隠匿した「俯瞰風景」を一読して、何がわかるというのだ。本作はまさに周回を前提としたものといえる。


 また、奈須の晦渋な表現もそれに拍車をかける。当然のように出てくる衒学的な専門用語と、入れ乱れる独自用語の数々。それは知識の有無以上に「きのこ節」に対する慣れの問題として私に立ちはだかる。私はまずそれらを装飾と割り切ってページをめくる。慣れてくるとそれらの中にまぎれた装飾を装飾として意図的に排してページをめくる。最終的にはその用語が装飾としてそこにあることの意図に「気づかされる」*1。奈須自身がどこまで博識で、どこまでが奈須の意図なのかはわからない。しかし、読者である私は「博識」であることを、奈須の無意識の意図を読み取ることまでをも要求される。

 


 前述のようなメタな読みとは別に、私は物語世界へと没入する。なんの留保もなく一人称が式へ変わり幹也に戻り、はては第三者へと視点が移動する。ここは前述の慣れが必要な部分であるが、そこを超えた先にあるのは自分が何者にも感情移入しないまま物語世界へと没入するという感覚である*2

 

 そのようなこともあり、私はこの世界の外縁を物語外で上手く思い描くことができない。もちろん、「殺人考察(後)」後の、幹也と式の「『未来福音』へと続くその後」を想像する余地は十分にありうる(本作のエンディングとは、まさにそういった可能性へ開かれるということである)。しかし、私が漠然と『空の境界』を思い描く際の時系列はそこではない。正直に言えば、どの章が該当するかを具体的に言うことができない。そうであるがゆえに、私には奈須が書いた原典を読み返すこと以外に本作の世界を堪能する術がないのだ*3

*1:なぜここを鍵括弧に入れたのかがよくわからない。すぐに鍵括弧に逃げることと読点を打ちすぎることが私の悪い癖である

*2:視点がころころ変わる小説は枚挙にいとまがない。最近読んだ中では恩田陸蜜蜂と遠雷』がめちゃくちゃ面白かった。とはいえ、ここまでフラットに物語世界に没入する小説は(流行りの言葉を使えば)記憶の限りない

*3:もちろん劇場版を見るという手はある。しかし、なににおいても言えることだろうが、原典を読み返すのと映像化した作品を見るというのはやはり違う

君の意思をたべたい【ホワルバ再考 #2】

 懐かしいと思った。

 人との関わりを厭う主人公と、余命幾ばくもない、明るく積極的なヒロイン。主人公を連れまわすヒロインに、やれやれと付き合う主人公。ノベルゲーにはまっていたゼロ年代の終わりを思い出す。あるいは、一番多感だった中学生のころに読んだ三田誠広いちご同盟*1。いずれにせよ、住野よる『君の膵臓をたべたい』に対する感想は、冒頭の一言に帰着する。端的にこういう物語は大好物だ。

 

 

 私を「WHITE ALBUM2 ~introductory chapter~」の絶望から救った「シスター・プリンセス」(アニメ版1期)から、乱暴に要約すれば以下のような希望を見出せる。

いつかは終わりが来ることがわかりきっている。それでもなお、我々はこの関係に留まり続ける。故に我々は幸福である

 私はこの希望を何年も温めてきたが、最近になって疑問が生じてきていた。すなわち、「『それでもなお』に現れる私の(自由)意思というものは本当に存在するのか」と。國分功一郎『中動態の世界』に出てくる、自由意志をめぐるアレントについての議論は、その疑問をさらに深めた。残念ながら、『中動態~』の精読が進んでいないこともあり、これについての結論はまだ出せていない。

 

 さて、強引を承知で言えば、『君の膵臓~』はシスプリのような物語である。ちょうど、島を出るまで12人の妹たちと「兄妹」*2であることを航が選んだように、彼らはヒロインが死ぬまでのあいだ、「友達」とも「恋人」とも呼べない「曖昧な」*3関係性を最後まで続けることになる。そんな彼らの出会いを、主人公は偶然だったと口にする。それに対してヒロインは反論する。

 「違うよ。偶然じゃない。私達は、皆、選んでここに来たの。君と私がクラスが一緒だったのも、あの日病院にいたのも、偶然じゃない。運命なんかでもない。君が今までしてきた選択と、私が今までしてきた選択が、私達を会わせたの。私達は、自分の意思で出会ったんだよ」

 

住野よる『君の膵臓をたべたい』192頁(2015)双葉社

 ――そうであれば、3人の出会いは3人の意思だったのか。春希が「WHITE ALBUM」を最後の曲に選んだことも、かずさがそれに合わせることを選んだことも、雪菜があの日あの時間に屋上へ足を運ぶことを選んだことも。3人の出会いが3人の意思であったならば、3人は3人のままに留まることができたのではないか。

 

 そんな淡い期待を粉砕する論理はいくらでも存在していて、それらへの反駁を全て準備できているわけではない。それでもなお自説に拘泥してしまうのは、『君の膵臓~』のように、限定的なシチュエーション(限界事例といってもいい)では「曖昧な」関係性が成立しうるからだ。そして、私は「3人が3人に留まるべきだった」と言いたいわけではなく、「3人に留まることを選択し得た」可能性に希望を見出している。言い換えれば、その選択肢が存在し得なかったことに私の、WA2icの絶望はある。

*1:余談だが、これを読んでラヴェルの「亡き王女のためのパヴァーヌ」が弾けるようになった人は私だけではないはず

*2:彼らの関係性を一言で表すことは難しい。少なくとも、一般的な意味で「兄妹」という語を使うことは憚られる。簡単に理由を言えば、航と可憐(咲耶でもいい)とが本当に血がつながっているかはわからないし、つながっているかどうかは本質ではないからだ。その一種の曖昧さが本作の特筆点ではあるが、詳細は別稿に委ねたい

*3:関係を表す既存の語では一口に表現できない、と言い換えてもいい

お盆につながる明日ぐらい

どうして僕たちは、発狂もせずに日曜の夜を過ごし、

月曜の朝に仕事へ向かうのだろう。

 

夕食を片付け、サプリ2錠を水で流し込む。

昨日から久々に触っている恋姫の萌将伝。

学生時代、あれほど泣きゲー・シナリオゲーを誉めそやしておきながら、

このシリーズほど周回したものはない。

 

――嗚呼、明日も仕事に行きたくない。

 

仕事への行きたくなさは春先よりこの方、急激なインフレが進行している。

ゴールデンウィーク前のそれが100だとすれば、今は5000兆。

ジンバブエもびっくり。

 

生真面目な上司が春先に倒れて以降、

「それでも職場は回っている。」と

エラい人は言外に匂わせるが冗談じゃない。現場の我々が回しているのだ。

エラい人にはエラい人なりの気苦労と言い分があるとは思うけど、

そこを慮るほど僕らは給料をもらっていない。

給料を上げろ。話はそこからだ。

 

とは言え、明日が終わらないとお盆休みは到来せず、

今年が終わらなければ念願も叶わない。

未来は今の地続きなのだ。

 

――嗚呼、今週もまた自分に懇々と言い聞かせ、

憂鬱な日曜日は憂鬱な月曜日へと続いてゆく。

謀ったな!白泉社ァ!!!

 友人との待ち合わせにはまだ早い。時間つぶしのために立ち寄った某書店。検索端末になんとなく「カハワライズミ」と打ち込んだのは神の思し召しか。

 

「えっ、『〜がある』シリーズの新刊が出てる!?!?」

 

「しかも『ワタシの川原泉』の5巻目!?!?しかも笑う大天使!?!?!?!?」

ワタシの川原泉V 笑う大天使 (花とゆめコミックス)

ワタシの川原泉V 笑う大天使 (花とゆめコミックス)

 

 

「謀ったな!白泉社ァ!!(CV:森功至)」

 即断即決即購入。自分のアンテナは高いと思いこんでいましたが、それは年がら年中ツイッターを見ているというだけの話。川原教授関連をさっぱりフォローしてなかっただけでこのザマでございます。

 しかも、これだけでは終わらなかったのでございます。

 

 笑みを隠しきれずに済ませたお会計。これまたなんとなく目を向けた雑誌コーナー。表紙にデカデカと踊る川原泉 大特集」の文字。

「まさか教授ではあるまい。たまたま同じ名前の新人作家とかモデルとかそういうオチでしょ………」

手に取り広げたダ・ヴィンチ8月号。

「うわああああああ!!!!!!カーラ教授だああああああああ!!!!!!!!!」

ダ・ヴィンチ 2017年8月号

ダ・ヴィンチ 2017年8月号

 

 モチのロン、こちらもお買い上げ。2回ともレジを叩いてくれたお姉さんは苦笑いしてました。よっぽどニヤニヤしてたんでしょうね。

 

 いやぁ、生きててよかった。

 ありがとう白泉社

 ありがとうダ・ヴィンチ編集部。

 

 そして、川原先生、本当にありがとうございます。

友人Kとの架空の別れ酒

「そーいえば、お前ってなんでM先輩と別れたんだっけ?」

酔いが回って思いついたままに長年の疑問を口にすると、Kは大げさにむせた。

「……ずいぶんと昔の話を掘り返しますねぇ?」

「さあて、自業自得じゃないですかね」

「今でもS子先輩に未練タラタラな誰かさんと違って、こちとらあの時にすっぱり終わった話なんですが」

「そう、それよ」

一旦言葉を切って正面のKを見据える。顔が真っ赤になっているのは、体質のせいらしい。アルコールに特別弱いわけではなく、身体が反応するのが早いだけなんだとか。

「なんであんなにすっぱり別れたん?」

 

 

 高校からの付き合いで大学も一緒だったKは、妙に馬が合うやつで、僕にとっては数少ない腹を割って話せる同い年の友人である。だから、彼の高校時代の「恋愛譚」は他の人よりも詳しいところまで知っている、はず。

 高校2年当時、Kには同じクラスに彼女がいた(ちなみに僕も同じクラスだった)。仮にAさんとしよう。KとAさんは、クラス替えの直後から半ば公然の仲となっていて、Kが真面目な顔で「Aと付き合うことになった」などとのたまった時は、誰もが今更過ぎてあきれたほどだ。はた目から見ていてもすごくお似合いで、文化祭のベストカップルにノミネートが噂されていた、そんな二人だった。

ところが、(公式に)付き合い初めて1ヶ月が過ぎたある日、KはAさんを一方的に振った。理由は、Kの心変わりだった。

 

 

「『心変わり』とは心外な。実際、俺はAよりもM先輩のほうが好きだったんだからな。むしろ本来あるべき道に戻った、もう『純愛』とすら言えるだろう?」

大仰な身振りで芝居がかったことを言うさまは、事情を知っているだけに滑稽だった。Aさんのことをつつくといつもこうだ。高校時代は半分くらいは本気でそう考えている節があったが、今僕の目の前にある自嘲の笑みにはあからさまな後悔が透けて見える。

 実は、Kは1年生のころから、親しくしていたM先輩に「片想い」をしていた。学年が上がるころにその「片想い」が実らないと踏んだKは、それと同じタイミングで急速に親しくなっていったAさんといい関係になり、付き合うまでになった。そしてM先輩はその件でKをイジり倒し、Kも開き直って惚気話をしていた。周囲はそれを当人たちの持ちネタとして笑って見ていた。

 ところが、「あることがきっかけで」、KはM先輩のことが未だに忘れられない自分に気が付き、その場の勢いで気持ちをぶちまけてしまった。そして、実は両想いであったことが判明してしまう。想い人に惚気話を聞かされ続けた鬱憤がたまっていたM先輩も自分の感情を抑えきれなかったのだ。予想外の告白に直面したKは、「苦悩」の末にM先輩の手を取ったのである。

 

 

「話を戻すけど、あれだけの経緯があったのに、なんであっさり別れたん?」

「簡単な話よ。価値観が絶対的にかみ合わないとわかったから」

「……もうちょい詳しくプリーズ」

「M先輩に振られた時な、メール1通で済まされたんよ」

「それは聞いた。気持ちはわからんでもないけど、きょうび珍しいことでもあるまいに」

「先輩も同じように考えたんだろうな。でも、それが決定的だった」

Kの表情が一気に険しくなる。

「俺は、直接顔も合わせずに告白するとか振るとか、それだけは絶対にありえないしあってはいけないと思ってる。面前で断られる覚悟もない告白なんて、はっきり言ってそんなものは自慰だ。別れを切り出すならなおさら、相手と直接向き合わずに済ませていいものじゃない。この手の話は、先輩にも何度もしていたつもりだった。それに、――これはお前には言ってなかったけどな、Aと別れる時は、缶のペンケースを至近距離で思い切り投げつけられた上に渾身の顔面グーまでお見舞いされたんだぜ?」

……あのAさんがそんなことを?

「そりゃ、自分を好いてくれる人に『別れてほしい』なんて伝えるのはツラいさ。でもな、当たり前だけど、言われるほうはその何倍も、何十倍もツラいんだ。別れを切り出す側は、絶望に染まった表情を直視して、グーとかパーぐらいは甘んじて受けなきゃいけない。その程度の覚悟もなしに――と、我ながらだいぶクサいことを言っているな」

「……」

「まあ、普通に考えても、2年近く付き合ったのにメール1通でサヨナラじゃ100年の恋も醒めるし、粘って付き合い続けても早晩ダメになるのが目に見えてるって話でしょ。ほら、俺って現実主義だから、無駄な抵抗はしないっていうか」

 

 

Kは妙に饒舌になり、僕はしばらく黙って聞いていた。二人とも酒がまわってきたんだろう、たぶん。

「……S子先輩さ、ちゃんと目を見て振ってくれたんだろ?」

「……ああ」

「それなら引きずってもしょうがないよな」

Kは一人で納得した顔をして手酌した。

「だから引きずってないっての」

知ってはいたが、人の話を聞かないやつだ。